
折角遺言書が残っているのに、その表現方法が曖昧だったり、配慮に欠ける書き方をしてあるばっかりに、かえって遺言執行にあたってトラブルに発展するケースがあります。
ここでは、そうしたトラブルの実例を挙げながら、トラブルを防止する遺言の遺し方を示していきます。遺言書作成の参考にしてください。
遺言の執行実務の流れ
遺言の内容を実現するために、遺言執行者が就任します。
遺言執行者は遺言によって指定される場合と、家庭裁判所から選任される場合があります。
特定の者に指定したいのであれば、遺言の中で執行者を指定しておきましょう。
遺言執行者は遺言の執行に必要な一切の行為をすることができ、相続人もこれを妨げることは出来ません。
- 遺言執行者は、遺言者が亡くなられたという通知を受けると同時に、相続人に対し、遺言執行者に就くことを連絡。
- 財産目録を作成し、相続人へ報告。
- 遺言の内容に従って遺産を処分。名義変更や財産の引渡しなど、相続人へ遺産を分配。
- 相続人へ遺言執行の完了を報告。
現場でよく起きる遺言の問題点とその対策
折角遺言書が残っているのに、その表現方法が曖昧だったり配慮に欠ける書き方をしてあるばっかりに、かえって遺言執行にあたってトラブルに発展するケースがあります。
ここでは、そうしたトラブルの実例を挙げながら、トラブルの防止策を示していきます。
-
遺言により不動産を売却することになったため相続人全員を確認して所有権移転登記をしようとしたが、戦災により戸籍が焼失していて相続人が容易に確認できず、スムーズに売却することが出来なかった。
できる限り、遺言書作成時点で相続人の確認作業を行っておきましょう!
-
子供達にはそれなりの財産が既にあるので、財産の大半を妻1人に相続させる旨の遺言書を作成し、子供達にも納得してもらっていた。ところが、作成後に息子が大病を患い資産を相当減らしていた最中に遺言者が死亡したため、事情急変を理由に息子から遺留分減殺請求された。
- 遺留分のことを十分に理解した上で遺言書を作成する
- 減殺請求されたときの対応策を遺言書の中に明記しておく
- 遺言書作成時の遺言者の考え方を明確に相続人全員に伝えておく
(または、遺言者の死後に執行者が正確に伝える)
-
遺言者が亡くなり、遺言書1通と、変更する部分のみを記した2通目の遺言書が出てきた。1通目では預金2,000万円を相続することになっていた長女が、2通目の遺言書で500万円に減らされており、長女が納得せずに遺産分割がなかなか進まなかった。
既存の遺言書の一部もしくは全部の内容を取消す場合は、新たな遺言書に全てを記載し直すこととし、変更前の遺言書は極力処分しておくことをお勧めします。